今回の事案を手短に

  • Coldcard の一部機種のファームウェアは、ウォレット作成時にハードウェア乱数生成器を実際には使っておらず、その結果リカバリーフレーズが第三者に逆算できる状態でした。現時点で1億1,100万米ドルを超えるビットコインの盗難が確認されています。

  • これは Coldcard の特定ファームウェアバージョンに固有の問題で、欠陥自体は2021年から存在し、今年になってようやく発見されました。他ブランドのウォレットが影響を受けたことを示す証拠は、現時点でありません。

  • CoolWallet はこの問題の影響を受けません。カードでウォレットを作成する際、リカバリーフレーズを決定づける乱数はセキュアエレメント内蔵のハードウェア生成器から直接取得されます。「ハードウェアが使えなければソフトウェアに切り替える」というフォールバックは設計されていません。


今回、何が起きたのか

2026年7月30日、Coldcard の製造元である Coinkite がセキュリティ勧告を公開し、一部のファームウェアバージョンにおいて、ウォレット作成時のシードの生成方法に欠陥があったことを認めました。

事態は当初の見立てよりはるかに深刻でした。ブロックチェーン調査会社 Galaxy Research が8月7日に公開した追跡レポートによると、盗難が高い確度で確認されたビットコインは1,719 BTC、金額にして約1億1,100万米ドルにのぼります。さらに多くの事例が検証中で、最終的な数量は2,300 BTC を超える可能性があるとされています。

Galaxy Research は同時に25種類以上の異なる攻撃パターンを追跡しており、この脆弱性がすでに複数の攻撃者グループによって、オンチェーンの資産の掃き出しに使われていることを示しています。自ら被害を申告した人は250名を超え、その多くは大口保有者ではなく、長期にわたってビットコインを持ち続けてきた一般の人々です。

この事案で最も不安を覚えるのは、被害者が何ひとつ間違ったことをしていない点です。フィッシングリンクを踏んでもいなければ、不審な承認に署名してもおらず、デバイスが手元を離れたこともありません。問題はウォレットが作成されたその瞬間に、すでに存在していました。


どこが問題だったのか:秘密鍵が最初から十分にランダムではなかった

まず、見落とされがちな基本の考え方から。

あなたの秘密鍵が安全である理由は、突き詰めればひとつしかありません。十分にランダムだからです。世界中の計算能力を足し合わせても言い当てられないほどに。だからこそハードウェアウォレットは、ウォレット作成時にチップ内のハードウェア乱数生成器(Hardware RNG)で乱数を作り、そこからリカバリーフレーズと秘密鍵を導き出します。この乱数こそが、ウォレット全体の土台です。

土台が緩んでいれば、その上に何を建てても意味がありません。

そして現在公開されている技術分析によれば、一部の Coldcard ファームウェアはまさにここで問題を起こしていました。

  • ファームウェア内のあるビルド設定によって、デバイスが内蔵のハードウェア乱数生成器をスキップしていた

  • 確認を担うライブラリは、その設定が「存在する」ことだけを確かめ、「実際に有効になっている」かどうかまでは確かめていなかった

  • 結果としてシードの生成はソフトウェア方式に後退し、その方式が頼っていたのはたった2つ——チップの製品シリアル番号システム時刻だけだった

シリアル番号も時刻も、計算で割り出せるうえ、ひとつずつ試すこともできるものです。つまり攻撃者は規則性さえ掴めば、影響を受けたウォレットのリカバリーフレーズを逆算し、そのままコインを持ち去れます。その間、あなたのデバイスに触れる必要は一切ありません。

Galaxy Research の追跡は明確な線も引いています。盗まれたビットコインはいずれも、そのアドレスがオンチェーンに初めて現れた時期が2021年3月17日以降であり、これは問題のファームウェアがリリースされた日と一致します。実際に影響を受ける機種とバージョンについては、Coinkite の公告を直接ご確認ください。他ブランドのウォレットについては、影響が及ぶことを示す証拠は現時点でありません。

最も厄介なのは、この問題が「ウォレットが生まれたその瞬間」に起きるという点です。ファームウェアを更新しても、すでに生成されたウォレットは救えません。影響を受けたユーザーは、新しく作り直して資産をすべて移すほかありません。


Coldcard をお使いの場合

異常に気づいているかどうかにかかわらず、次の順で進めてください。

  1. まずご自身の機種とファームウェアのバージョンを確認しCoinkite 公式勧告に記載された影響範囲と照合してください。

  2. ファームウェアの更新が終わるまで、影響を受けた機種で新しいシードを生成しないでください。更新していないファームウェアは依然として問題のあるシードを生成するため、急いで新しいウォレットを作ると同じ轍を踏むおそれがあります。

  3. ファームウェアを更新したあとも、別途まったく新しいウォレットを作成し、資産をすべて移してください。更新そのものでは、古いシードは直せません。

  4. もとのリカバリーフレーズは漏洩したものとして扱い、他のデバイスやソフトウェアウォレットで再利用しないでください。

  5. そちらから近づいてくる「復旧サポート」は一切信用しないでください。この種の事案の後には、必ず大量の偽サポートや偽の復旧ツールが現れます。確認は公式チャネルのみで行ってください。


CoolWallet はどうしているか

今回の事案は、実はひとつのことを浮かび上がらせています。ハードウェアウォレットにハードウェア乱数生成器が「あるかどうか」は、まったく本質ではありません。本質は、ウォレットを作成するその瞬間に、それを本当に使っているかどうか——それとも特定の状況で、あなたがまったく気づかないまま、より弱い方法に黙って切り替わっていないかどうかです。

Coldcard の問題は後者でした。チップにはハードウェア乱数生成器があるのに、処理がそれを迂回していたのです。

道は一本、逃げ道はない

CoolWallet のこの点でのやり方は、そもそも他に通れる道を用意しないことです。

カードでウォレットを作成するとき、リカバリーフレーズを決めるその乱数は、CC EAL6+ 認証を取得したセキュアエレメントの内部で生成され、チップ自身の真性乱数生成器(True Random Number Generator、以下 TRNG)から直接取得されます。最初から最後まで一本道です。

ウォレット作成 → 乱数の生成 → セキュアエレメントの TRNG

この道筋のどこにも、「ハードウェアが使えなければソフトウェアで生成する」というフォールバックは用意されていません。ここが決定的な違いです。本来ハードウェアが担うべき処理がソフトウェアに委ねられ、しかも5年間誰も気づかなかった——Coldcard のような事態が起きる余地が、この設計にはありません。

CoolWallet Pro、S、Go の3製品はいずれも CC EAL6+ 認証のセキュアエレメントを採用しています。3者のファームウェアはそれぞれ独立していますが、リカバリーフレーズを生成する中核ロジックは共通で、いずれも上記の経路に従います。

私たちの言葉だけを信じる必要はありません

セキュリティは盲目的な信頼の上に成り立つべきではありません。CoolWallet Pro のセキュアエレメント ファームウェアと SDK は完全に公開されており、エンジニアやセキュリティ研究者であれば誰でもコードを直接読み、シード生成の流れが説明どおりかを確認できます。

オープンソース=安全ではない

ただ、ここで正直に言っておくべきことがあります。Coldcard のファームウェアもオープンソースです。

この欠陥は完全に公開されたソースコードの中に横たわったまま、これほど長い間見つかりませんでした。

つまり「オープンソースかどうか」は、安全と危険を分ける境界線では最初からありません。オープンソースは検証を可能にしますが、実際に誰かが見る保証にはならず、見た人がたまたま正しい角度から入る保証にもなりません。

リスクの上限を決めるのはアーキテクチャです。中核となるシード生成のロジックが、迂回できない一本の道の中に閉じ込められているのか、それとも設定で切り替えたり、降格させたり、置き換えたりできる脇道が残されているのか。前者なら、たとえ十分に審査されていなくても起こりうる誤りには限りがあります。後者では、判断条件をひとつ書き間違えるだけで、何年も誰にも気づかれないままになりかねません。


見落とされやすいこと:リスクは引き継がれる

ここまで読んで、資産を CoolWallet に移そうと考えている方には、先にはっきりお伝えしておくべきことがあります。

CoolWallet は既存のリカバリーフレーズのインポートに対応しています。利便性のためですが、それは同時に——そのフレーズがもともと脆弱性のあるデバイスで生成されたものであれば、潜在的なリスクもそのまま引き継がれるということでもあります。

理由は前述のとおりです。脆弱性の核心は「リカバリーフレーズ自体のランダム性が足りない」ことにあります。どれほど安全なハードウェアウォレットに移して保管しても、そのフレーズが安全になるわけではありません。攻撃者が狙っているのはそのフレーズであって、物理的なカードではないからです。

ですから、影響を受けたデバイスでリカバリーフレーズを作成したことがある場合、正しい対応はそれを CoolWallet にインポートすることではありません。CoolWallet でまったく新しいリカバリーフレーズを生成し、資産を新しいアドレスへ移すことです。

さらに一段上の備えとして、次のことをおすすめします。

  • CoolWallet で新しいリカバリーフレーズを生成する。出所の不明なフレーズや、影響を受けたデバイスで生成されたことのあるフレーズを流用しない

  • CoolWallet App とスマートフォンの OS を、いずれも公式の最新版に更新しておく

  • リカバリーフレーズはオフラインでバックアップし、厳重に保管する。いかなるウェブサイトやアプリにも入力せず、第三者に渡さない

セキュリティに終わりはありません。CoolWallet は世界のセキュリティ研究や新たに現れる脅威を注視し続け、製品の安全性を強化し続けます。それがユーザーの皆さまに対する、私たちの最も基本的な責任です。

CoolWallet のセキュリティ設計についてご質問がありましたら、公式サイトよりお問い合わせください。


本記事のデータは、Galaxy Research が2026年8月7日に公開した追跡レポートを引用しています。事案は現在も調査中であり、実際の被害額は今後も更新される可能性があります。

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